
自分が想像していたことを体感的に理解できた「タンジブルインターフェース」を用いた体感型のアーバンプランニングツールを開発。参加型まちづくりにおけるコミュニケ―ションの活性化を目指す自分が想像していたことを体感的に理解できた
- #アーバンプランニング
- #市民参加手法の確立
2025年2月12日(水)・13日(木)の二日間にわたり、仙台市の国際センターにて、Xdiormを活用した参加型ワークショップが開催されました。本ワークショップは、仙台市をクライアントとし、JR仙台駅前の青葉通を対象エリアに、まちの象徴となる景観や機能について議論を深めることを目的としたものです。
仙台市は、日本の東北地方に位置する宮城県の県庁所在地であり、東北地方最大の都市です。人口は約108万人(2024年時点)を擁し、東北地方の経済・文化の中心地として発展してきました。東京から北へ約350kmに位置し、新幹線を利用すれば約1時間半でアクセス可能です。
「杜の都(もりのみやこ)」として知られる仙台市は、市街地の随所に豊かな緑が広がり、特に青葉通の美しいケヤキ並木は街の象徴となっています。都市の歴史は戦国時代にさかのぼり、1600年代には伊達政宗によって築かれた城下町として発展しました。現在でも、伊達政宗の騎馬像が佇む仙台城跡や、彼が創建した瑞鳳殿など、歴史を感じられるスポットが点在しています。
近年では、東日本大震災(2011年)の復興拠点としても重要な役割を担い、持続可能な都市開発や防災に力を入れたまちづくりが進められています。こうした背景のもと、仙台駅前エリアの再開発や公共空間の活用が進められており、本ワークショップが実施された青葉通も、都市の未来を考える上で注目されるエリアのひとつとなっています。
青葉通は、JR仙台駅前から東西に走る目抜き通りで、仙台の主要な通りのひとつであり、駅前エリアは今後、沿道のビルの建て直しが予定されるなど、大幅な改編期を迎えています。2021年には「青葉通駅前エリアのあり方検討協議会」が設立され、公共空間のあり方について官民連携のもとで検討が進められてきたところです。
本ワークショップでは、このような動きのあるJR仙台駅前の青葉通の未来を考えるため、Xdiormを活用し、公共空間について多角的に検討しました。
本ワークショップは、2025年2月12日(水)・13日(木)の2日間にわたり、仙台国際センターにて開催されました。仙台市が主催し、JR仙台駅前の青葉通を対象エリアとして、「仙台の顔」を考えることをテーマに、多様な視点から意見が交わされました。
各日午後3時間のプログラムでは、参加者が2チームに分かれ、それぞれ5台のXdiormユニットを連結したシミュレーション環境を活用。関係者、仙台市職員、都市計画コンサルタントなど、多様な立場の関係者が一堂に会し、青葉通の未来像について各々の自由な発想を可視化し意見を交わしました。
開催概要
Xdiormのインターフェースは、初めて操作する参加者でも直感的に扱うことができ、議論のなかで自らのアイデアをすぐに形にすることが可能です。ユニット上に駒(Tangible Tokens)を配置すると、大型ディスプレイに投影されるVR空間では即座に景観が再現されます。
また、今回のワークショップでは、「仙台の顔」の新しい要素も検討するために、「SENDAI」の巨大サインや伊達政宗像、七夕飾り、沿道のビルなど、仙台市専用のオリジナル駒を多数作成。既存の約100種類の駒と自由に組み合わせることで、より創造的なアイデアが次々と生まれていきました。
Xdiormの機能を活用し、現状では片側4車線ある青葉通の車道を歩行者空間へと変化させるシミュレーションを実施。歩道の拡幅パターンごとに、創出される新たな空間の利活用の可能性について、参加者の意見を可視化しました。
ワークショップを通じて、数多くのアイデアが生まれ、都市空間の在り方が次々と可視化されていきました。特に注目されたのは、青葉通の特徴を活かした景観や空間設計に関するアイデアです。
一つのアイデアとして挙げられたのが、青葉通のケヤキ並木を5列に拡張し、「杜の玄関口」として再構築する案です。これにより、仙台の豊かな自然と都市の調和がさらに強化され、緑豊かな歩行者空間が創出されることが期待されると考えました。もう一つのアイデアとして、七夕飾りを青葉通の両側に展開し、オープンカフェと共存させる案が挙げられました。仙台を象徴する七夕飾りを通りの景観に組み込むことで、文化的なアイデンティティを強調し、賑わいと魅力を兼ね備えた空間のあり方が模索されました。
生成された景観は、さまざまな視点から評価が行われました。ペデストリアンデッキからの俯瞰視点では、都市全体の景観や人々の流れを俯瞰的に捉え、広場や並木道の配置がどのように街並みに溶け込むかが検証されました。歩道を歩く人の目線では、実際に歩行者として通りを歩いた際の印象を重視し、空間の魅力や過ごしやすさについて議論が深まりました。また、視点場を自由に変えられることを利用して、街並みが建物の内部や上層階からどのように見えるのかを検討することで、通りの景観全体をより多層的に考える視点が取り入れられました。
今回のワークショップでは、事前の想定を超えて次々と意見やアイデアが出されました。さらに、準備された駒の組み合わせでは表現できないアイデアも飛び出すなど、青葉通の新たな可能性について大胆に検討することができました。さらに、参加者の普段聞けない意見を聞くことができたり、他の参加者の考えやアイデアに触れることで、各自の視点が広がり、議論が深まる様子を見ることができました。これらは、主催者である仙台市としても想定以上の成果だったようです。
参加者からは「視覚的にシミュレーションすることで議論の質が向上した」「直感的に操作できるため、想像していたアイデアがすぐに形にできた」といった好評の声が寄せられ、Xdiormの最大の特徴である、直感的操作とダイナミックな可視化機能による効果が実証された形となりました。
青葉通エリアの将来ビジョンについては、2025年3月に策定され、その後もまちづくりに向けた検討が続けられる予定です。引き続き、注目していきたいと思います。